ソーシャルレンディングが迷走している。架空の事業への投資を謳って資金を集める、集めた資金を目的外に融資するといった不適切業者に対し、金融庁は業務改善命令を発し登録を取り消している。問題を是正するため、金融庁は、貸金業法を見直し、融資先の情報開示を業者に求める方針を示した。しかし、融資先開示で、果たして問題が解決するであろうか?

(1)直接金融のクラウドファンディングは株式・出資形態でなければいけない
 
ソーシャルレンディングは、融資型クラウドファンディングである。クラウドファンディングは、ネット上で事業情報等を掲示した上で不特定多数から小口資金を募る仕組みである。本来は、投資家が資金調達者の事業等を見極めた上で株式・出資形態で投資をする直接金融である。
 ソーシャルレンディングは、その直接金融の仕組みに間接金融のツールである貸出を融合したものであり、ここに歪みが生じる。木で竹を接ぐ感がある。


(2)間接金融では仲介機関は貸出先を開示しない
 間接金融では、預金者等の資金の出し手は、銀行等の金融仲介機関がどこに融資するかは問わない。預金者は、仲介機関が情報生産機能を駆使して厳密なリスク管理を行った上で適切に融資することを信じて運用を予め委任する。故に、銀行等は免許を要し、当局の厳格な監督下にある。またそれ故、貸出は情報生産機能を持つ信用力の高い仲介者が行わねばならない。
 融資先を公表することは、そもそも間接金融の性格に合っていない。仲介業者が不誠実だということで情報開示を求めるのは、どこかずれている。その前に、仲介業者を、信頼して運用を任せられる誠実な業者に厳しく制限することがより重要である。逆に、資金の出し手に自己責任を負わすのであれば、投資型クラウドファンディング等証券形態での直接金融の形態を貫くべきである。

(3)中小企業・ベンチャー向け資金フロー拡大は王道
 こんな木で竹を接いだような、張り子の虎のようなソーシャルレンディングに期待が集まるのは、中小企業・ベンチャーに対する資金フローが、いつまでたっても貧弱なままであるからである。しかし、その解決には伝統的な筋に沿った処方箋しかない。
 まず、既存の中小企業に対しては、銀行等が、ミドル・リスク先を発掘し、こうした借り手に高めの金利で貸出を実施すべきである。利鞘を確保しつつ、貸出を拡充するには貸出先のフロンティアを広げるしかない。その為には銀行に対する監督の考え方も修正する必要がある。
 ベンチャー向けについては、投資型・購入型クラウドファンディングの育成とベンチャー・キャピタル(含む地域ファンド)の質的な充実を軸に、ベンチャー向け資金の出し手の投資家層の拡大を図るのが重要である。
 ソーシャルレンディングなどというカタカナの甘美な響きに妙な期待を寄せるのではなく、直球に磨きをかけて正攻法でベンチャー・中小企業向け融資を立て直してほしい。(了)